2018年11月1日(木) 11:00 〜
フローベルガー: パルティータ第6番 ハ調 FbWV 612より“Saraband” | 2:26 |
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フローベルガー: パルティータ第5番 ニ調 FbWV 611より“Gigue” | 1:20 |
フローベルガー: メディテイション ニ調 FbWV 611a(抜粋) | 1:50 |
フローベルガー: パルティータ第6番 ハ調 FbWV 612より“Saraband” | 2:26 |
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フローベルガー: パルティータ第5番 ニ調 FbWV 611より“Gigue” | 1:20 |
フローベルガー: メディテイション ニ調 FbWV 611a(抜粋) | 1:50 |
【アルバム紹介】
本作は、2016年に生誕400年、2017年に没後350年を迎えた作曲家、ヨハン・ヤーコプ・フローベルガー(1616-1667)のメモリアルとして制作された。
今回録音した6組曲(1656年)は神聖ローマ帝国皇帝フェルディナンド3世に献呈された美しい自筆譜によるもので、それぞれ4つの舞曲から成り、アルマンド/ジーグ/クーラント/サラバンドというオーダーである。
FbWV612の1曲目はアルマンドではなくラメント(Lamento)となっている。これは20歳の若さで戴冠直後に亡くなったフェルディナンド4世への追悼である。愛する子を失い哀しみにくれる王(前出のフェルディナンド3世)のためにフローベルガーは敢えて無垢な明るい調(現代でいうハ長調)を選び、曲の最後に2オクターブに亘る「天国への階段」を音階で描いたのだった。
【演奏】
桒形亜樹子(チェンバロ)
【レコーディング】
2017年4月4~6日(松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)小ホール)
【使用楽器】
チェンバロ:Jeol KATZMAN(Amsterdam)2005年製作
(1638年ヨハネス・ルッカースによる。桒形所蔵)
楽器調整・調律:林 彰見
ピッチ:a=414Hz 音律:B.Lehmanによるpc分割Bach調律(2005年)
本作品はe-Onkyo music、 mora 等で配信中です。詳しくはこちらから
【演奏者からのメッセージ】
「天国への階段の先にあるもの」
2016年に生誕350年、2017年に没後300年のメモリアル・イヤーを2年続けて祝ってもらった幸せな作曲家ヨハン・ヤーコプ・フローベルガーは、ドイツのシュトゥットガルトに生まれ、ヨーロッパ中を旅した音楽家である。その行き先はローマ、パリ、ロンドン、ウィーン、マドリッドなど文化の中心地であり、各地で最先端の音楽を吸収したことだろう。初めて鍵盤「組曲」の順番を決めて発表した作曲家であったらしい、ということでも音楽史上に名を残している。今回録音に選んだ6つの組曲(1656年)は神聖ローマ帝国皇帝フェルディナンド3世に献呈された美しい自筆譜によるもので、それぞれ4つの舞曲から成り、アルマンド/ジーグ/クーラント/サラバンドというオーダーである。バッハ、ヘンデルなどの組曲に慣れている耳には、最後が急速で派手な感じのジーグなどでなく落ち着いたサラバンドであるのが不思議かもしれない。しかし順番や曲数に関しては彼自身もまだ試行錯誤をしていた形跡が他の写本などから認められる。
FbWV612の1曲目はアルマンドではなくラメント(Lamento)となっている。これは20歳の若さで戴冠直後に亡くなったフェルディナンド4世への追悼である。愛する子を失い哀しみにくれる王(前出のフェルディナンド3世)のためにフローベルガーは曲の最後に2オクターブに亘る「天国への階段」を音階で描いたのだった。行き着いた先(Do音=DominusのDo。主、神という言葉から来ているとも言われる)には天使達が待ち受け、魂を歓迎するかのような明るいジーグが続き、地上の父王をも慰める。
「将来の自分の死に対する瞑想(Meditation)」も似た雰囲気を醸し出す名曲である。最後にはラテン語で"Memento mori" 死を憶え、とあり、生前に自分の追悼曲を書いてしまったのだ(FbWV611の1曲目のアルマンドの代わりにこちらが置かれている写本が存在する)。フローベルガーの最も得意なジャンルと思われるこれらの曲は、楽譜の通り弾くだけでは全く音楽にならず、行間の時間の使い方が厳しく問われる。音楽家は当然ながら、まず美しい音を出す技を磨くのだが、加えて微妙な時間を操る感性と研ぎ澄まされたバランス感覚が無ければ人の心を動かすことは出来ない。
フローベルガーは私がチェンバロを始めた直後から、何故か向こうから傍に寄り添ってくれた稀有な作曲家であった。この記念すべき年に、彼の才能が最も花開いたこれらの芳醇な「組曲」の録音機会が与えられたのは、この地上での奇跡的な数々の出会いの結果であり、天の采配の妙を深く感じている。この場をお借りして、録音に関わって下さった全ての方々に心からの感謝を捧げたい。
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